| 「アウトニア王国奮戦記 でたまか 問答無用篇」のろぎによる感想みたいなもの |
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ネット公開時の同作品もそうなんですけど、この作品ってすごく器用貧乏なんですよね。物語全体の印象とか、登場人物の設定とか。 舞台であるアウトニア王国は、誰が見てもすばらしい国で、豊かな国土、良識ある貴族、オープンな皇室、正しい王様と王妃と、いずれもきっちり物語上の役目を果たしています。 すばらしい国家の見本と言うのか、作者があらかじめ舞台のアウトニア王国は良い国にしようと決めたから、良い国になるようなエピソードが"抜かりなく"配置されている。 同じことは登場人物にも言える。有能なんだけどそれが災いして冷や飯を食わされている主人公マイド・B・ガーナッシュ。優秀な電子人格ヴァル。姉御肌のマリリン。自分の立場を十二分に理解し行動をとる王女メイ。あと、典型的な貴族のどら息子と、ほぼすべての登場人物の性格設定がきっちり固定している。 別の言い方をすれば、主人公は主人公らしく、正しい国の王様は正しい国の王様らしく、王女は王女らしく、キャラの性格や行動が彼らの職業・立場にあまりに安易に結びついている。ほんの端役にいたるまで、それは徹底している。すごく類型的で、それ故にわかりやすい。 だから、それじゃダメなんです、とは言えない。それぞれのキャラは確立しているし、職業と性格が一致しているからこそ、複雑になりやすい設定がすんなり理解でき、テンポよく物語が進んでいく。 例えば主人公のマイドしたって、この物語を進めていくために十分機能している。主人公が物語を進行させるのは、当たり前なんですが、この作品の場合きちんと枠に収まりすぎている。ドキドキ感がなくて、どこかぼんやりしている。 ローディス辺境軍が裏切り、やらせのはずだった戦争が本物の戦争に変わった時も、いち早くそれに気づいたマイドはきちんと悩む。やらせの戦争しかしてこなかった軍人たちに殺し合いをさせなければならないことを悩み、他の物語の主人公と同じようにベストじゃないかもしれないが答えを見つけ出す。 すべてが事態に対して主人公もその他の人物も的確に反応している。物語もそれに順応して展開する。感情の吐露もあるから、物語にも人物にも薄っぺらな印象は受けない。だけど、ドラマがない。 矛盾した言い方になるけど、この作品は他のキャラクター小説のように次々とイベントが発生し、それに対応していき物語が進んでいく。だから、ドラマはあるはず。 ラストで頼みの綱だったヴァルが消滅し、次につなげる"引き"もある。それなのに、ドラマがないという印象はぬぐえない。 結局は、最初に出した「器用貧乏」という言葉に行きつく。 作家の榎野英彦(クレジットには鷹見一幸、あとがきには本家・鷹見一幸とある)さんはベテランだから、長年培ってきた経験でこれくらい表現すれば、読み手も理解できるだろう、という線引きが明確なようです。確かに表現も物語の流れも的確だし、文章も平易でリズム感がある。不自然なところがまったくないから、すらすら読めてしまう。そのせいか、もう一歩読み手に踏み込んで来ない。 手馴れた文章が災いして、すべてのエピソードが安定しきっている。なにが起こっても、予定調和に見えてしまう。無駄がないから、不確定要素がないし、安定感に寄りかかっているから、この後どうなるんだろう、と考えることなく読み終わってしまう。 作家にとっての強みが、弱点になってしまっている。だから、「器用貧乏」という印象に行きつく。 まだ話の途中だからなんとも言えないし、ようやく物語もごたごたしてきたから今後どうなるのか楽しみにしています。 そういえば、6月1日に「でたまか2」が発売されるそうですね。楽しみにしています。 「アウトニア王国奮戦記 でたまか 問答無用篇」 鷹見一幸 株式会社角川書店(角川スニーカー文庫) 2001年4月1日発行。 |