春は気持ちがいいと思う。
 どんなに事件が起き様が、どんなに辛い出来事が起き様が気にならない位に。
 既に、神経が麻痺をしているのかもしれない。冬の内に起きた辛すぎる出来事。
 もう…元には戻れない。

 12月31日。もうすぐ年が明けるというときに一つの事件が起こった。
 殺人事件。既に聞き飽きた様な言葉、起きてはいけない筈の事が日常のように起きてい
る。
 もう、殺人事件程度では頭には残らない。しかし、今回は少し違っていた。
 少女の惨殺。そのことが少しだけ耳に止まる。それでも、それ程気にかけては居なかっ
た。
「……殺されたのは鈴木沙耶香さん16歳………」
「!!」
 明は画面の方に顔を向け、聞き漏らさない様に集中する。
 同姓同名…珍しく無い…12億も住んでいるんだ居て当たり前だ…心で自分に言い聞か
せる。
 しかし、その思いは瓦礫のように崩れ去る。
 同姓同名当たり前だと思った。自分の知っている人だったのだから。
「なんで…なんで殺されなきゃならなかったんだよ…」
 眼から涙が溢れ出す。恋人だった…昨日までは…。
 悲しみと共に激しい憎悪が生まれてくる。
 しかし、何も出来ない。明にはそれが悔しかった。
 だから、毎日毎日テレビに釘付けになっていた。
 徐々に犯人の姿が浮き彫りになりつつ有る。しかし、犯人を見つける所までは行かない。
「なぜだ…何故見つからない。何をやっているんだ警察は」
 明の手に力が入る。
 そして、恨みのはけ口が警察にも向けられる。
 役立たず…心の中で思う。
 ただ求めていたのは犯人が捕まること、明にとって、少しの進展など無いも同然のこと
だった。
 だから、起こったのだろう。

 鈴木沙耶香死亡から約2ヶ月。
「警官一人、何者かによって刺され意識不明の重態………」
 部屋を暗くして、テレビを見ていた。
 部屋の中はテレビのアナウンサ−の声と奇妙な笑い声が混ざり合って響いている。
「いい気味だぜ、犯人を見つけられない馬鹿だからいけないんだ」
 酔っていた。明にとって、もう犯罪を犯すことなど蚊を殺すように簡単なことになって
いた。
「見つかったら、沙耶香を殺した奴を身元がわからないほどにしてやる…」
 喉を鳴らし笑う。その姿は悪魔そのものだった。

 鈴木沙耶香死亡から約5ヶ月。
 犯人の似顔絵が公開された。
 犯人を捕まえるには警察の選択は間違っていなかった。しかし、犯人の人命も尊重する
なら間違った選択だった。
「こいつ…みたことあるぞ…たしか、CDショップのやろうじゃねぇか」
 急がないとまずいと思った、警察に捕まってしまう。それまでに片付けないと、だから、
呼び出した…金を払えば逃がしてやると。勿論、そんな気はない殺す相手なのだから。
 しかし、中々、信じようとはしなかった。当然だと思う、だが、時間が無い…、
「仕方が無い……」
 明は、ペ−パ−ナイフを持って、犯人の所へ向かった。
 しかし、既に捕まっていた。
 だが、明は気にせずに襲い掛かる、狙うは眼、その一点に集中した。
 しかし…止められた…。
「なんでだ、なんでだ、こんな奴殺させろ」
 

 今は、刑務所の中に居る。
 警察を刺したことで拘束されている。
 しかし、悔いは無い。
 未練も無い。
 終わりだ…この世も何もかも。



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